マリア・ラボの都市伝説
「午前3時と午後3時きっかりにマリア・ラボのことを思い浮かべてはいけない。彼女があなたを殺しに来る」
そんな都市伝説が、巷で囁かれておるそうな。
マリア・ラボ「Maria Labo」とは、一体何者なのか?
伝説によると、彼女は外国に出稼ぎに行っとった、いわゆるOFW(フィリピン人海外出稼ぎ労働者)で、出稼ぎ先で起きた悲劇が、彼女のその後の人生を狂わせちまったっちゅーことらしい。
伝説の主がフィリピンの外貨獲得に貢献しとるOFWっちゅーところが斬新じゃな。
ビサヤ地方はパナイ島のカピス州で広まったとされる彼女の伝説には、大きく分けて2つのバージョンが存在しとる。
1つ目は、「出稼ぎ先の主人に食人鬼にされて帰って来た」バージョン。
カナダにケアギバーとして出稼ぎに来た、妻子持ちの若い女性マリア。勤務先の屋敷の主人が実は妖怪で、マリアが働き始めて間もなく死んじまうんじゃが、今際の際に彼女に妖怪パワーを授けたそうなんじゃ。
いや、「授けた」っちゅーより、「押し付けた」と言うたほうがよいかもしれん。おそらく、全ては屋敷の者が仕組んだ罠だったんじゃろう。
そんな邪悪なセットアップに遭ったとはつゆ知らず、カナダに来て早々、雇い主が死んで職を失うというアンラッキーに見舞われたマリアは、違法斡旋業者から負った膨大な借金を抱えたままフィリピンに舞い戻る羽目になったんじゃが、やがて体内に眠っとった妖怪パワーが発動し、人間の血と肉に飢えた食人鬼と化す。
それは、警官の夫が仕事から戻ってきた、ある晩のことじゃった。
※ディヌグアン(Dinuguan)=豚の肉や臓物などを豚の血で煮込んだフィリピン料理
事もあろうに我が子を食わされた夫は激怒し、台所にあったボロ(フィリピン産の山刀)をひっ掴むや、力任せにマリアめがけて振り下ろした。
ボロで顔を割られたマリアは家を飛び出し、そのまま行方をくらましてしもうた。「マリア・ラボ」の名前は、このボロに由来しとるそうな。
アスワン(妖怪)になった彼女は、その後己の姿を自在に変える能力を身につけたらしく、ある時は若く美しい女性、またある時は顔面に醜い傷跡を持つ老婆と、様々な姿で目撃されとる。
最近では、国内のどっかのショッピングモールでセールスレディーをやっとるらしい。
ワシのこの記事を読んでマリア・ラボのことを知ってしもうたお主、決して午前3時と午後3時きっかりに彼女のことを思い浮かべてはいかんぞ。職場を抜けだしてお主を食べにやって来ちまうからの。ヒヒヒ
ただし、一応携帯電話を持っとるらしいんで、いざとなったら彼女に電話(またはテキスト)して命乞いしてみるとよい。彼女の携帯番号は…知らん。
そして2つ目は、「出稼ぎ先の主人に殺され、幽霊になって帰って来た」バージョン。
スペインに家政婦として出稼ぎに来た、妻子持ちの若い女性マリア。スペイン語が話せず、屋敷の者とのコミュニケーションに苦しみながらも、持ち前の明るさと人懐っこさで何とか仕事をこなしとったんじゃが、ある日突然、屋敷の主に呼ばれた。
主の部屋に恐る恐る入った彼女は、ロウのように白く痩せこけた体をベッドに横たえた老主人が放つ強烈な妖気に震え上がった。
慌てて逃げ出そうとしたのじゃが、いつの間にか閉まっとるドアは、忌々しいことに押しても引いても開きやしない。
ドアと格闘するマリアの背後を取った老主人は、その弱々しい外見からは想像もつかん常人離れした怪力で彼女を羽交い締めにし… キャーヤメテッ グヘヘオトナシクセイ
数ヶ月後、マリアはたくさんの土産と外貨と共に田舎に帰ってきた。が、寡黙になり、笑顔を一切見せなくなった彼女の豹変ぶりに、周囲の者は戸惑った。
ある深夜、妻の悲痛な泣き声に目覚めた夫がそっと外に出てみると、全身血まみれで泣き叫ぶ妻の姿がそこにあった。彼女の首は鋭利な刃物かなんかでざっくりと切り裂かれており、そこから鮮血が勢い良く噴き出しとったんじゃ。
そのあまりにも壮絶な光景にびっくり仰天した夫は速攻でベッドに潜り込み、枕に向かって「これは現実じゃない。夢なんだ。そうだろ?そうなんだろ?」と呟いとったが、そうこうしとる内に妻が寝室に戻っくる気配がしたんで、とっさに仰向けになり、寝とる振りをした。
そのままベッドに入ろうとせず、生気を失った青白い顔をググッと近づけて夫の寝顔をじっと観察する妻。鼻腔に突き刺さる腐った死肉の匂いにゲロを吐きそうになりながらも、懸命に嘘寝を続ける夫。
翌朝、目が覚めた夫は「やっぱりあれは夢だったんだ」と安堵しつつ、傍らに寝とる妻を抱きしめ…ようと思ったんじゃが、あいにく妻はおらんかった。
居間、台所、便所、ベッドの下、戸棚の中、テレビの後ろなど、家中を探しまくったが、やっぱりおらん。
子供たちに聞いてみると、彼らも同じような夢を見たらしい。マリアは子供たちにキスすると、黙って部屋を出て行ったそうな。
その夜、突然ドアをノックする音が聞こえた。夫と子供たちはマリアが帰って来たと思い、大喜びでドアを明けたんじゃが、そこに立っておったのは二人の外国人だった。
スペイン大使館から来たというその男たちは、マリアが勤めとった屋敷のマスターベッドルームから彼女の遺体を発見したことを伝えた。遺体は相当傷んでおったそうで、腐った死肉の匂いが部屋中に漂っておったんじゃと。
屋敷の老主人は、元は優秀な医者だったのじゃが、フィリピン人の妻に先立たれてから精神に異常をきたしてしもうたらしい。
遺体を発見した日は、ちょうどマリアがカピス州の田舎に帰って来た日じゃったそうな…。
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