屍の盗人ブサウ
ごきげんよう。クンクン博士じゃ。
ブサウ(Busaw)は、バルバル同様、人間の死肉を好む妖怪じゃ。日中は人間に姿を変え、養豚や根菜類の栽培など、農業に精を出しとるが、夜になると鋭くとがった歯、カギ状の爪、太く長い舌を持った本来の姿で墓場に赴き、屍(しかばね)を掘り起こす。
空になった棺桶は、遺体の代わりにバナナの茎を入れてやり、きちんと元通りに埋め直すそうじゃ。結構几帳面な妖怪なんじゃな。
こうして手に入れた死体は、そのまま担いでいくのがしんどいからかどうか知らんが、いったん生きた豚に変身させて自宅に連れ帰るらしい。
この豚をレチョンかなんかにして、何食わぬ顔でご近所に振る舞うこともあるので、要注意じゃ。決して近所づきあいがよいわけではなく、こいつを食わしてご近所もブサウにしてしまおうっちゅー魂胆なんじゃ。
とは言え、いったん豚料理になって出されちまったら、本物の豚肉かどうかを見分けるのはまず無理じゃろう。「これって、元死体とかじゃないですよね?」と確認するわけにもいかんし。
もし食っちまったら、その時は…おとなしくブサウになるしかないのう。
ブサウから遺体を守るには、遺体を酢で洗い、香りの高いハーブ類をすり込んどくとよいらしい。塩をまぶしとくとさらに効果的じゃ。
…なんだか、調理前の下ごしらえをしとるみたいじゃな。どっちが妖怪なんだか。
しかし、死体の腐敗臭は平気なのに、酢やハーブの匂いは苦手とは、妖怪っちゅーもんはつくづく変てこな生き物じゃのう。
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