怠け者のフアン
こんにちは!ケンちゃんです!
こんにちは!ケンちゃんです!
「怠け者」をタガログ語で「タマッド(tamad)」と言いますが、救いようのない究極の怠け者を「フアン・タマッド(Juan Tamad)」と呼ぶことがあります。
いつも楽することばかり考えている、とってもレイジーな男の子フアン君が巻き起こす騒動を描いた物語「フアン・タマッド(怠け者のフアン)」が世に出たのは、今から90年ほど前の1919年。無名の作者によって書かれた詩を、作家のマヌエル・アルギリアさんとリディア・アルギリアさんが1957年に挿絵付きの童話として出版したのがヒットし、一躍子供たちの人気者になりました。
ちなみに「フアン」という名前は、フィリピンでは不特定の男性を呼ぶ場合にもよく使われます。英語で言うところの「ジャック」とか「ジョン」ですね。日本語では「太郎」といったところでしょうか。
お母さんからお使いを頼まれるたびに、怠け癖を発揮してアホみたいなヘマをやらかし、後でこっぴどく叱られてしまうという、まるでのび太くんのようなキャラが受けて、過去に何度かコメディ映画化されています。ストーリーも様々なバリエーションが存在しており、今や「怠け者」の代名詞にもなっている、国民的ぐうたら野郎なんです。
どんだけレイジーかというと…
例えば、お腹を空かせたフアン君が、グアバの木を見つけたとします。
ああ、美味しそうなグアバがなってる。食べたいな。でも手が届かないや。
そんな時、普通なら木によじ登って果実をもぎ取るとか、竿などのツールを使って叩き落とすとかするでしょ?でも、フアン君はそんなメンドクセー事はしないのです。え?マジ?じゃ一体どうするの?
木の下に仰向けに寝そべって口を開け、やがて熟れてきた果実が万有引力の法則に従って落ちてくるのを、いつまでもいつまでもズーーーーーーーッと待ち続けるんです。そんな奴なんです。
操縦者を失ったサロゲートみたいにそこらへんに転がっていたところをお猿さんたちに発見され、死体に間違われて埋葬されちゃったこともあります。昨年フィリピンでも流行った「プランキング(死体ごっこ)」の先駆けと言えましょう。
今回は、そんな筋金入りの怠け者、フアン君の物語を幾つか紹介します。
1)フアン、カニを買う の巻
お母さんからカニを買ってくるよう頼まれたフアン君。重い腰をあげ、グズグズノロノロと近くの市場に出掛けました。
カニを買ったまではよかったんですが、家まで持ち帰るのがめんどくさい。で、何を思ったか、カニを入れた籠をひっくり返し、中のカニたちを全員出してしまいました。
「キミたち、先に家に行っててくれない?ボクは後でゆっくり帰るから」
カニたちはカサカサッと散っていき、フアン君はノロノロダラダラと帰路につきました。
とっぷりと日が暮れた頃にようやく帰ってきたフアン君を、イライラしながら待っていたお母さんのカミナリが襲います。
「今までどこほっつき歩いてたの!歩いて片道10分かそこらのお使いに、なんで8時間もかかんなきゃいけないのよ!」
ふと、息子が手ぶらなのに気づき、「あんた、カニは?」
フアン「え?まだ着いてない?先に行かせたんだけど」
どうやら、カニたちに家の住所を教えとくのを忘れてたようです。って、そういう問題じゃないですね。
お母さん「はぁ?何言ってんのあんた?宅急便にでも頼んだの?」
事の次第を知ったお母さんが怒り狂ったのは言うまでもありません。
2)フアン、餅を売る の巻
お餅をしこたまこしらえたお母さんが、フアン君に市場で売るよう頼みました。
売り物のお餅を食べながらノロノロダラダラと市場に向かうフアン君、途中で早くも懈怠感に襲われます。「あー、市場まで行くのメンドクセー」
何気に道脇の田んぼを眺めていた時、日向ぼっこしてる一匹の丸々と太ったカエルとカッチリ目が合いました。
フアン「カエルさんカエルさん景気良さそうですね。このお餅、買ってくれませんか?」
カエル「…ケロッ」
フアン「え?…はい、わかりました。じゃあそういうことで」
カエル相手に意味不明の会話を交わすと、なんとお餅を全部田んぼに投げ込み、さっさと家に帰ってしまいました。
「いやに早かったけど、ちゃんと売ってきたんでしょうね?お代金は?」異常なほど早く戻ってきて、しかも肝心の売上金を持ってない息子に、不安を募らせるお母さん。
フアン「もちろん売ってきたよ。でも代金は一週間後に払うって」
最初はそれで納得したものの、翌週、翌々週、そのまた翌週も同じ理由で一向に集金できない状況に、ついにブチギレてしまいます。
お母さん「とんでもない客だわ!あんたナメられてんのよ!そのフザけた客のところに案内して頂戴!母さんが行って取り立ててやるから!え?そんなことされたら、あんたと客の信頼関係が壊れる?とっくに壊れちゃってるわよそんなもん!こっちは生活かかってんのよ!」
グズグズノロノロしている息子を急かしながら取り立てに出向いた戦闘態勢のお母さん、ついに田んぼで日向ぼっこしてる「お客さん」とご対面~。
事の次第を知ったお母さんが(更に)怒り狂ったのは言うまでもありません。
3)フアン、嫁もらう の巻
年頃になったフアン君に、お母さんが言いました。
「あんたもいい年になったんだし、そろそろお嫁さんでも貰ったらどう?」
フアン「どんな人連れてくりゃいいの?」
さすがフアン君、自分の人生の伴侶を選ぶことすら億劫がってます。いつものお使い程度にしか考えてない様子。
お母さん「そうねー、寡黙な子かしらね」
おや?お母さん、そこは「そんなの自分で決めなさい!」と突き離すべきでは?
めんどくさそうに立ち上がったフアン君、グズグズノロノロしながら身支度すると、お嫁さんを探しに出掛けました。
フアン「あのー、結婚してくれませんか?」
近所の女性A「ちょっと、いきなり現れて突然何言い出すのよ!なんでこのアタシがアンタと結婚しなきゃいけないの?大体、物事には順序ってものがあって、まず『ハ~イ、キミ可愛いね。携帯の番号教えてくれる?』とかなんとか言ってアプローチかけて、最初は鬱陶しがられるかもしれないけど諦めずに口説きまくって、バラなんか贈ったりして誠意を見せて、やっとデートの約束取りつけて、高級レストランで御飯食べて…」
フアン「あ…もういいです。あなた失格です」
フアン「あのー、結婚してくれませんか?」
近所の女性B「アンタ誰?」
フアン「忘れてください。あなたも失格です」
フアン「あのー、結婚してくれませんか?」
近所の女性C「喜んで❤」
フアン「ハイ失格」
あらあら、もったいないですね。どうやら、フアン君の頭の中では「寡黙な子=全く喋らない子」になっちゃってるようです。
やたら人が集まってる家の前を通りかかったフアン君、中で女の子が静かに横たわってるのを見つけ、のっそりと家の中に入って行きました。
そして、女の子に近づき、ボソッと「あのー、結婚してくれませんか?」
女の子「…」
お?こ、これはひょっとして…?
念のためにもう一度。
フアン「あのー、結婚してくれませんか?」
女の子「…」
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
「おお、あなたこそボクのお嫁さんに相応しい!」理想(っていうか、お使いの目的?)の女性をやっと探し当てて大喜びのフアン君、普段のノロノロダラダラからは想像できないほどの素早さで女の子を担ぎ上げると、黄猿顔負けのスピードで家に駆け戻りました。
フアン「お母さん!お嫁さんを連れてきたよ!」
お母さん「あら!ずいぶん早かったわね」
フアン「ご注文通りのコだよ」
お母さん「はじめまして。フアンの母です。息子をどうぞよろしく」
女の子「…」
お母さん「ご両親にご挨拶に行かなきゃね。式はいつがいいかしら」
女の子「…」
お母さん「あなた、随分顔色悪いけど大丈夫?」
女の子「…」
フアン「ね?カモクでしょ?エッヘン!」
お母さん「寡黙どころか、さっきから一言も喋らないじゃない…。 ヤダ何この子、息すらしてない!」
そこへ女の子の遺族が怒鳴り込み、上へ下への大騒ぎに。
事の次第を知ったお母さんが(またしても)怒り狂ったのは言うまでもありません。
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