妖怪バルバル

ごきげんよう。クンクン博士じゃ。

バルバル(Bal-Bal)は、死骸を喰らう闇の世界のハゲタカじゃ。死肉を切り裂くための鋭く尖った歯と爪を持ち、化け物然とした恐ろしい姿をしとる。

村で死者が出ると、空気中に漂う僅かな死臭を敏感に嗅ぎとり、闇夜に紛れて死体を盗みにやってくる。

ビサヤ地方の田舎で通夜に立ち会うたことがあるんじゃが、トランプなどして夜通し起きとる理由を「遺体がいなくならんよう、見張っとるんじゃよ」と説明してくれたご老人がおった。バルバルを警戒しとったんじゃろうか。

まんまと死体を盗んだ後、空になった棺桶の中にバナナの樹の幹を残しておくらしいんじゃが、このバナナの幹が遺体に化け、遺族らや周りの者にあたかも遺体がまだ棺桶の中に入っとるように見せかけるそうじゃ。同じ妖怪のアスワンも、襲った獲物のコピーをこしらえて家に帰らせるというが、それと同じような能力なんじゃろう。

ただし、生きとる者に襲いかかって喰っちまうアスワンとは違い、バルバルは死体専門なので、死んでしまわん限り襲われることはない。ま、死んでしもうたら喰われようが何されようが関係ないんじゃがの。

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