中学の頃、MJSの部活の一つに漫画倶楽部というのがあり、私はその部長を務めたことがあった。

 

といっても、特に部長らしい仕事はせず、「君たちは好きなことしてて。ボクもそうするから」みたいな感じで、スケッチブックに向かってただ黙々と好きなものを描くだけの日々を送っていた。

 

大体、マンガと言うのは、誰にも邪魔されず、自分の世界に篭ってニタニタ笑いながら描いている時が一番楽しいのである。そうだろみんな?(決めつけ)

 

そんな「我関せず」といった私の態度を見るに見かねたのか、ある日顧問の先生が「みんなで漫画を合作しては?」と「お題」を提供してくださった。

 

そこで私は初めて部員たちの前に立ち、「お題」について検討を始めたのだが、キャラ、時代設定、ストーリーなど細かい部分を決めていくのが面倒なので

* テーマは自由

* ページ数の制限無し

* 出だしを私が描く

* 続きを部員が一人ずつ順番に描き継いでいく(リレー形式)

* 直前のコマとの整合性が取れてさえいれば、後の展開は自由

* 締め(最終回)を私が描く

ということにした。基本的にキャラや時代設定やストーリー展開は描く人次第というわけ。良く言えば各自の感性と発想力を尊重したスタイル、悪く言えば丸投げの行き当たりばったりなスタイルと言える。

 

大体、マンガというのは、最初からきっちりと設定を決めようとすると、徐々に熱が冷めていって描く前から挫折してしまう恐れがある。大まかな構想を決めたら、後はノリと勢いでバーっと描いたほうが早い事もあるのだ。一旦始めてしまえば、設定は後からついてくるものなのである。「案ずるより産むが易し」。そうだろみんな?(言い訳)

 

早速構想を練り始めたのだが、なかなかアイデアが浮かばない。そこで私の漫画の師匠である長兄に相談することにした。

 

さすがは我が師匠、次から次へとアイデアを出してくれる。

例えばこんな感じ。

 

長兄「…で、人類が滅亡、と」

私「みんな死んじゃうの?そんな…」

長兄「そこから(次の人による)新たな物語が始まるのであった…」

私「つまり、実質的なスタートは次の人から?」

長兄「そう」

私「…」

 

採用が憚れる案が多数を占めたものの、長兄の奇抜な発想は私のイタズラ心を大いに刺激してくれた。

 

長兄とのブレーンストーミングで取っ掛かりを得た私は、「なるべく次の人が困る(=次の人がどうつなげるのか予想がつかない)展開にする」をコンセプトに、改めてアイデアを練り始めた。

 

で、実際に出来上がったのは

 

時は現代。身元不詳の名無しの男性キャラ3人が行きつけの居酒屋を目指して夜道を歩いていたが、見慣れているはずの一本道の先がなぜか謎の森へと続く謎の吊橋に豹変していた。突然の不可解な出来事に驚愕する3人。とりあえず橋を渡って森の中を進んでいたら、今度は謎の城がバーンと登場。つづく。

 

という謎だらけの展開。

 

登場人物

 

 

そこから部員たちがストーリーをつなげていったのだが、進めば進むほど謎は深まるばかり。

 

中でも小学低学年の部員で誰よりもたくさん描いてくれた子が考えた展開は、3人の主人公が当時人気だったサンシャインビルの屋上に突然テレポートしたと思ったら、ビルの輪郭が崩れて放り出され、なぜか便器に落ち込んでウンコと共に流されてしまう、というぶっ飛びぶり。その自由すぎる発想のインパクトが強烈過ぎて、未だに覚えている。他の部員には不評だったようだが、私はこの展開に大いに満足した。

 

便器に流された3人の行く末を描くはめになった次の部員は、この謎のテレポートに着目し、某ネコ型ロボットのアイテムの一つ「ど●でもドア」を登場させた。

 

これにより、漫画のタイトルが「どこで●ドア」改め「不思議な扉」になった。別にこの道具がメインテーマというわけでもないのだが、他にタイトルのつけようがなかったのだ。

 

こうしてストーリーは伏線の回収が行われない(そもそも伏線など存在しない)まま進み、謎の城主の謎の企みによって謎のテレポートを繰り返すだけだった3人が、城主お抱えの剣士と戦って勝つという、ようやくまともな展開を見せ始めたところで私の元に戻ってきた。

 

さて、これをどう終わらせるか。

 

自分が撒いた種とはいえ、ここまで脈略のない謎だらけのストーリーを読者が納得する形で終わらせるのは、どう考えても無理がある。

そこで状況を素直に受け入れ、謎のまま無理やり終わらせることにした。

 

決闘に敗れた剣士が負けを認め、城主の「どこでもド●」を勝手に使って3人を元の場所に送り届けてあげる。元の場所に戻った3人が「あれ、夢だったん?」「いやいや、俺ら全員体験したんだから夢じゃないベ」「ま、考えてもしゃーないわ。とりあえず飲みに行こ行こ」みたいなことを言いながら立ち去る。終わり。

 

今までの冒険を「考えてもしゃーないわ」で全て無かったことにするという、夢オチよりも酷い結末。ごめんねみんな。(土下座)

 

かくして完成した「不思議な扉」。ハチャメチャな内容になってしまったが、特に制約を設けなかった分、各自があれこれ空想しながらのびのびと楽しく描いていた、と思いたい。

 

漫画倶楽部初の本格的な(?)合作マンガだったせいか、クラスの他の子達も興味を持って読んでくれた。原本を紛失してしまったのが残念でならない。

管理人はスケベ