今でこそ6匹の愛犬らに囲まれている私だが、元から犬好きだったわけではない。

 むしろ、大嫌いだった。

 

日本にいた頃(6~7才の頃)、飼っていたポインターに引きずられて体中傷だらけになったことがあった。

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フィリピンでも、近所のシェパードに追いかけられたり、数匹のドーベルマンに囲まれたことがある。

 

そう。それは、私達家族がフィリピンに来てまだ間もない頃だった。

 

近所に友達もあまりおらず、家で暇を持て余していた私達兄弟のために、父が何処かから自転車を借りてきてくれた時のことだ。

 

交代で自転車を乗り回すことに決まり、最後に私の番になった。

 

久しぶりに乗った自転車の乗り心地を楽しみながら一通り近所を走り回り、満足して帰路についていたその時、道のはるか向こうに犬が2匹戯れているのが目についた。いずれも体躯の逞しいシェパードだ。

「犬を見かけたら、自転車から降りて歩けば追いかけられない」という父のアドバイスを思い出し、さっそく自転車から降りてやり過ごそうとしたのだが…

 

なんと、私を発見した犬達が、私めがけて疾走してくるではないか!

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どうやら、日本の犬には通用したであろう対処法は、残念ながらフィリピンの犬には通用しなかったようだ。

犬達に自転車もろとも倒され、半ズボンが引き裂かれ、爪を突き立てられて穴が開いた腿から鮮血が吹き出した。

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恐怖の体験に意識が朦朧としてきたその時、目の前の家から犬達の飼い主が現れた。

 

が、私の状態を見るなり「ふ、ふん、大した怪我じゃないな」と踵を返し、犬たちと共に家に引っ込んでしまった。

犬の飼い主に見捨てられたまま、激痛に耐えかねて大声でわんわん泣いていた時、私の泣き声を聞きつけた次兄が助けにやってきてくれた。

 

次兄に連れられてようやく家に帰り着いた時、ミンダナオの田舎から来ていた私のおばさん(母の妹)が手当をしてくれた。

傷口に唾液を塗り、その上から塩のようなものを擦り付けるという不思議な療法だったが、それがフィリピン古来の民間医療法だと知ったのは、それから数十年ほど経った後のことである(塩みたいなものがミョウバンだということも後で知った)。これで感染症も発症せず、ちゃんと治ってしまったのだから凄い。

 

こうした経験が、幼い私の心の底に拭っても拭い切れないトラウマを残し、立派な「ドッグヘイター」へと成長させてくれたわけだが、その後の飼い犬達のふれあいを通して、徐々に心の傷が癒されていった。

 

とはいえ、道端に放し飼いにされている犬達への恐怖と、放し飼いにしている飼い主たちへの怒りは、今だに消えていない。