私が家族とフィリピンに移住してきたのは、私が小学2年生の頃だった。
移住後に入学したマニラ日本人学校は、当時マニラ市内のビルの中にあった。今の校舎のような広々とした運動場や体育館などはなく、昼休みに狭い体育室でドッジボールをするのが男子生徒たちの楽しみの一つだった。低学年も高学年も一緒になって、ボールの投げ合いに興じていた。
片目が極度の乱視で距離感がつかめず、さらに虚弱体質で運痴の私は、皆がドッジボールで遊んでいるのをただ眺めているだけだったが、皆あまりにも楽しそうだったので、ある日ちょっとやってみる気になった。
どうやら、ドッジボールの得意な高学年の恨みを買ってしまったらしい。
怒りに燃えた高学年による、恐怖の報復攻撃が始まった…。
逃げても逃げてもピンポイントで当てられる執拗な集中攻撃に晒されては、もはやドッジボールを楽しむどころではない。
以来、昼休みに体育室に行くことはなくなった。
人間関係というのは、本当に難しい。