「クマカトック(Kumakatok)」とは、タガログ語で「ノックをする」という意味じゃ。公衆便所などで「コンコン」「入ってます」なんてやり取りをする、アレじゃ。

 

ルソン島とビサヤ諸島には、真夜中の街を練り歩き、方々の民家のドアをノックしては「不吉なお告げ」をして回る三人組がおるそうじゃ。

 

そのお告げとは、家の者の内の一人が数日後に死ぬっちゅーものらしい。人間のような背格好をしとるが、ダーク・シディアスばりの黒衣装に全身を包み、顔の半分をフードで覆い隠しとるんで、正体は一切不明。一般的に、真ん中におるのは若い女性、その両脇におるのは老人じゃと言われとる。疫病などが流行った時に頻繁に出没するそうじゃ。

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当然じゃが、死を告げる「不吉な訪問者」を歓迎してコーヒーや菓子を出すような家などおるはずもない。ドアに白ペンキで十字を描いて「ノックトリオお断り」のサインを発信する民家が出始めたんで、しょーがないから政府事務所、病院、教会のドアを相手にしとった時期もあるらしい。

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真夜中に政府事務所のドアをノックしたって、みんな定時にキチンと帰っちまってて誰も出んと思うんじゃがな。それに、人命救助を商売にしとる病院で「患者さんが死にます」なんて、そんなネガティブキャンペーン打っとったら、病院の警備員につまみ出されちまうのが関の山じゃ。教会じゃと?「キリスト教の象徴」とも言える教会のドアは平気でノックできるのに、白ペンキでテキトーに描いた十字架にはビビるっちゅーんかい?

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ちなみに、第二次世界大戦時には、多くの死者が出たにも関わらず、仕事をサボっとったらしい。理由は「ほとんどの建物がドアごと破壊されてノックできなかったから」なんじゃと。

つまり、黒ずくめのトリオにとって大事なのは「お告げ」じゃなくて「ノック」なんじゃな。「実」より「形」にこだわりよるんじゃ。

 

まあ形式を重んじることも確かに大事じゃがの。ほどほどにせんと本来の目的を見失っちまう恐れがあるんで、気をつけんといかんよ。