マニラ首都圏とブラカン州の間にある、リサール州ロドリゲス。山や丘が多いこの地は、昔は「モンタルバン(Montalban)」と呼ばれとった。ウェストバレー断層(旧マリキナ断層)が通っておることから、地震もよく発生しとるらしい。

 

この土地には「ベルナルド・カルピオ」なる怪力男の伝説が残っとってな、断層と地震の因果関係がまだ分かっとらんかった昔は、コヤツが地震を起こしとると信じられとったんじゃ。

 

ちゅーことで、今回はモンタルバンの地震を呼ぶ男「ベルナルド・カルピオ」の伝説を、例によって想像力を逞しくしながら紹介しようと思う。

 

ちなみにこの男の伝説には、「怪力男」っちゅー共通のキーワードをベースに、様々なバージョンが存在しとる。興味を持った方は、他のバージョンも探してみるとよいじゃろう。

 

その昔、フィリピンがまだスペインに支配されとった頃。

 

リサール州サン・マテオのある山奥に、貧しくも働き者の夫婦が暮らしておった。近所付き合いも良好で、現在の生活に満足しとったのじゃが、唯一の悩みはなかなか子宝に恵まれないっちゅーことじゃった。

 

といっても、さすがに「お互いの垢をこすりあって子供をこしらえる」ほどの自暴自棄にはまだ陥っとらんかったようじゃ。せいぜい子作りに関するハウツー本を片っ端から買い漁り、関連情報をインターネットでググリ、「この食べ物は精子にいいらしい」「この体位の方が生まれやすいらしい」と試行錯誤を繰り返しながら、いつか「おめでた」が来ることを信じて、せっせと夜の営みに励む程度じゃった。

 

そんな涙ぐましい努力が実を結び、結婚ウン十年目にしてついに待望の「おめでた」が到来。夫婦は生まれてきた男の子を「ベルナルド」と名付けた。

 

ベルナルドは両親の寵愛を受けながらすくすくと育っていくのじゃが、間もなく両親はこの子の類まれなる能力に気づく。

 

床に打ち付けた釘を人差し指と親指だけでスポンと引っこ抜いちまったり、ドリルでさえ音を上げちまう硬い地盤に拳を叩きつけて地下水を湧き出させたり、自分の身体の何十倍もの大きさを持つ岩石を軽々と持ち上げて怪しげな拳法を使う男に投げつけたり、もーとにかく人間の常識を片っ端からシカトしまくる怪力ぶりを発揮し始めたんじゃ。

 

やがて逞しい若者に成長したベルナルドは、スペイン軍に対抗するフィリピン人ゲリラグループに身を投じ、持ち前の怪力を武器にして、幻影旅団のウヴォーギンの如く、敵をバッタバッタとなぎ倒していくのじゃが。

 

人間離れした戦闘能力を持つベルナルドに手を焼いたスペイン勢は、「目には目を」とばかり、これまた常識が通用せん「魔法使い」を送り込むことにしたんじゃ。

 

魔法使いは言葉巧みにベルナルドを絶壁の谷に誘い込み、彼が谷間に入り込んだところで双方の岩壁を彼めがけて突進させ、圧殺する作戦に出た。巨大な岩のサンドイッチになったベルナルドは、全身の力を総動員して迫り来る岩壁を押しとどめ、辛くも圧殺は免れたものの、万力のように締め付けてくる岩を相手に力を抜くわけにもいかず、そのまま身動きできなくなっちまった。

 

ベルナルドは今でもそこで頑張っとって、身体を揺する毎に地震が起こるということじゃ。

 

bernardocarpio