トロピカル・フルーツの代表格、マンゴー。タガログ語で「マンガ」と呼ばれとる三日月形のこの果実は、甘い香りと甘酸っぱく濃厚な味を持っており、フィリピンでは完熟はもちろん、半熟も串刺しにしてバゴオン(フィリピン産塩辛)を塗り付けて食ったり、ジュースにして飲んだりされとる。国内はもちろん、世界中で親しまれとる果物の一つじゃ。

 

そんなマンゴーの起源について、こんな言い伝えがある。

 

昔々、ある村に老夫婦とパンガ(Pangga)っちゅー名の若い娘が住んでおった。もう余命いくばくもない老夫婦は、かわいい一人娘の行く末を案じ、夫婦揃って「パンガの花嫁姿を見るまでは、死んでも死に切れんわい」といっつも呟いておったそうな。

 

パンガは見るからに利口そうな容姿をしておったのじゃが、実際マルチタレントで何でもできる子じゃった。特に商売で天賦の才能を発揮し、フィリピンでいち早く「パンガ喫茶」ちゅうマンガ喫茶を全国に展開して大成功。おかげで金に困ることは一切なかった。後は娘に相応しい男と結婚してもろうて、できれば冥土の土産に孫の顔も拝めれば最高っちゅーのが老夫婦の最後の楽しみだったんじゃな。

 

ところで、その村には筋金入りのプレイボーイが住んでおった。「詩人」を自称するその男は、定職にも就かずに自己満足の詩を書き綴りながら毎日をのらりくらりと過ごし、目を付けたオナゴに近づいては「おお、君のその神秘的な瞳と天使のような愛らしい唇につい吸い寄せられてしまったよ。これから月と太陽の光が降り注ぐバルコニーで、めくるめく甘美なひと時を僕と過ごす気はないかい?」と甘ったるい言葉を投げかけて手篭めにし、次の獲物を捜し求めるっちゅーことを繰り返しておった。

 

村の者たちから「さすらいのマノン(Manong)」と呼ばれとるこの男、経済力は限りなくゼロに近かったが、オナゴを口説き落とすテクはまさに「魔性」といってよく、奴の「月と太陽の光が降り注ぐバルコニー」を聞いたが最後、どんなオナゴもメロメロになっちまって足腰が立たなくなる始末じゃった。当然のことながら、浮浪者マノンはパンガの両親から「娘に近寄らせたくない男」第1位にランクインされとった。

 

ところが、じゃ。

 

老夫婦の懸命なブロックも虚しく、美貌の才女パンガはよりによって「口の魔術師」マノンに恋をしちまうという、最悪のパターンにはまり込んでしまうのじゃった。

 

恋は盲目と言うが、こうなってはもういかん。老夫婦が「こりゃパンガ!目を覚まさんかい!あんなタラシの妄想野郎と一緒になったら、不幸になるのは目に見えとるじゃろが!」と口酸っぱく言うたところで、そんなこと理性より感情が先走って男にトチ狂っちまった娘が聞き入れるわけがないのじゃ。

 

むしろ、そうした老夫婦の必死の忠告がかえって二人の愛の炎に薪をくべちまう結果となり、逆切れした二人は「何このジジババうぜえ」とばかり森の中に姿を消してしもうた。

 

恋というのはな、反対されればされるほど、障害があればあるほど、強く激しく燃えさかるものなんじゃよ。今まさに恋愛ドラマの真っ最中におる二人にとって、第三者の忠告など糞の役にもたたんのじゃ。

 

そうじゃ。そうなのじゃ。結婚の相談に乗ってやった某在比邦人も、ワシがあんだけ「後で絶対後悔しますよ」と口にタコができるほど忠告してやったってのに、最後は何だか知らんがワシが悪者になっとるんじゃ。こりゃ一体どーゆーこっちゃ?で、結局どうなった?え?やっぱりうまくいかなくて、自分のブログで嫁やフィリピンの悪口言っとるって訳分からんぞ?何なんじゃ?何がしたいんじゃ?教えて!教えてお爺さん!教えてアルムのモミの木!

 

フーッ、フーッ

 

 

話を元に戻そうかの。

 

老夫婦は、森の中で消息を絶ったパンガの身を案じ、老いた体に鞭打って森の中を探し回った。と、森の奥深くで今まで見たことのない不思議な果実をつけた一本の木を見つけた。三日月のような形状、太陽のような色彩、マノンの話術のような甘ったるい香り、そしてパンガの豊かな才能を偲ばせる栄養たっぷりの濃厚な味。

 

やがて、村人たちはその不思議な果物を「マノン」と「パンガ」をくっつけて「マンガ(Mangga)」と呼ぶようになったということじゃ。