「ダラケトノン(Dalaketnon)」は、闇の世界に君臨する邪悪な精霊じゃ。ダラケトの木(Ficus benjamina Linn - ベンジャミン(クワ科)の木 )を入り口とする異次元の世界「ダラケト」に棲んでおる。

 

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(画像 Ficus benjamina Linn)

 

フィリピン妖怪界でも高貴な血を引くエリート魔族として、バルバル、マナナンガル、ワクワク、アマランヒグ、アスワンといった他の妖怪をアゴで使い、人間界に災いをもたらす。当然ながら、善良な精霊達とは敵対関係にある。

 

水に棲む妖怪を支配しとるカラウとの力関係は不明じゃ。

 

容貌は人間そっくりで、オス、メス共に稀有の美貌と長身の持ち主じゃ。人間に擬態しとる可能性もあるが、本当の姿は誰も知らん。他の下級妖怪とは違い、いかにも悪さをしそうな醜悪な形相の化け物に変身して人間を喰らうなんて、そんな低俗な真似はせん。

 

むしろ、人間界に完全に溶け込み、貴族相応の瀟洒なマンションに住み、一般人よりも遥かに美味なものを食べ、博識でフィリピンの裕福層にもよう顔が利いとる。その美貌と明晰な頭脳と誠実温厚な物腰で、周りの人間共からは絶大な信頼を得とる。正体がバレることはまずない。

 

で、人間界でどんな悪さをするかっちゅーと、たまーに適当な理由をもうけては自宅で豪華な社交パーティーなどを開催し、ゲストの皆さんに贅沢なご馳走を振る舞うのじゃが、そのご馳走と一緒に、ダラケトノン族秘伝の「魔法の黒米」を食べさせるのじゃ。そのまま炊くのか、白米に混ぜるのか、ケーキ、蕎麦、餅、煎餅などの加工食品にするのか知らんが、知らずに食べた人間はたちまちダラケトノンとなり、ダラケトに連れて行かれて、コヤツらの奴隷として一生こき使われるらしい。

 

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なぜ人間をそのまま攫って奴隷にしないのかっちゅーと、ダラケトノン族しかダラケトに入れんようになっとるかららしい。さすがはフィリピン妖怪界のリーダー。本拠地のセキュリティ体制も万全っちゅーわけじゃ。

  

同じように人間にご馳走を振る舞って同類に変えちまう妖怪に「屍の盗人」ブサウがおるが、コヤツの場合は同類を増やすだけで自分の利益には繋げておらん。逆に競合相手を増やしとる。

 

っちゅーことで、金持ちのパーティーに招かれたら、ご飯や米を使った料理には要注意じゃ。部屋の隅っこでリンゴでもかじっとった方が無難じゃろう。

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「魔法の黒米」っちゅーアイテムだけでなく、ダラケトノンは超能力も備えておる。能力発現時には髪の毛や眼の色が白くなるらしいので、お主を見て突然白髪になったり、目の色を変えたりする金持ちがおったら要注意じゃ。

一つは、離れた物体を意志の力で動かす能力。いわゆる「テレキネシス」じゃな。

 

部屋の隅っこでリンゴなんぞかじっとる用心深い人間には、この能力を使って口をこじ開け、無理やり怪しい料理を押し込んじまうことも可能なわけじゃ。

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もう一つは、自分の実質的なコピーを無尽蔵に量産する能力。

 

これはこれで大した能力と思うのじゃが、あまり使い道はなさそうじゃ。同じ人物が同時にいろんな場所におったら騒ぎになるじゃろうし、精霊っちゅーからには不老不死の身体を持っとるじゃろうから暗殺の心配など要らんし。せいぜい、マスター版が人間界におる間、コピー版にダラケトや妖怪界の統治を代行してもらうくらいじゃなかろうか。

 

何?「自分のコピーを無尽蔵に作れるんなら、わざわざ人間を攫って奴隷にしなくても、コピーたちをじゃんじゃん作って、そいつらを働かせればいいじゃん」じゃと?

 

「実質的なコピー」とはつまり、身体的特徴から思考パターンに至るまで、己を形成しとる全ての要素を引き継いだ「完全コピー版」ってことなんじゃ。当然、コヤツが持っとるエリート意識や高級志向や傲慢さも、丸々引き継いでおる。そんなのが重労働に甘んじるわけないじゃろ。「お前がやれ」「いやお前が」みたいな騒ぎになるに決まっとる。

 

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ちなみに、バルバルやアスワンもコピーを作る能力があるが、こちらは獲物のコピー専門で、己の犯行をごまかすための一時的な効果しかない。

 

フィリピンの妖怪たちを支配し、超能力を備え、これといった弱点を持たず、優れた頭脳と指導力、高い社会的地位、幅広いコネと影響力、そして豊富な資力で完全に人間界に溶け込んでおる「魔界の帝王」ダラケトノン。コヤツが本気で人間界の侵略に乗り出したら、ひとたまりもないじゃろう。非力のワシらにできることは、善良な精霊たちを敬い崇めることで彼等のパワーを高め、ワシらに代わって退治してもらうことだけじゃ。

 

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画像ソース:

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http://manila-mania.blogspot.com/2012/02/old-enchanted-balete-tree.html#.V0iWaDWLRhE